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 株式会社ハウスパートナー

社長的こころ 3

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 目次


 

ロクちゃん ★1

ロクちゃんはあまり人と話すのが得意ではなかった。
自分でもその辺はよくわかっており、話しかけられたら話す。という感じだった。
ある意味、無愛想な感じがするが、ロクちゃんはロクちゃんなりに身をつけた「処世術」だろう。
つまり、人と居て何を話していいのかわからない。
間が持たない。 緊張する。 結果としてロクでもないことを話してしまう。
それだったら、最初から何も話さない。聞かれたことだけを答える。
そのほうが失敗をしない。という考えである。
 

ロクちゃんはまじめに働いていた。
極端な話、「いいか、ロク、お前は馬鹿でどうしょうもないやつだ。
だが、お前は言われたことは つまり単純作業はできるやつだ。」と、
認めてやれば喜んで何でもする「ロクちゃん」だった。
自分を認めてくれて、きちんと払ってくれる人に対しては一生懸命働いた。
そして、あまりお金を使うのが好きではなかった。
「一緒に飲んでいて帰ろうとするときに最後まで財布を出そうとしない、
いわゆる人にたかろうとするケチ」ではなかったが、夏の熱い中、
仕事をしている時でもジュース1本買わずにいた。
そして酒匂川の湧水の入った水筒をおいしそうに飲むのであった。

私はある日、大好きな雪だるまのラーメンをおごった帰りにロクちゃんに「いったいいくらで生活しているの?」と尋ねた。
すると、毎日2合半のご飯を炊いて、それを食べている。
夕方6時半過ぎになると、総菜が半額になる店があるのでそれで大体のおかずはまかなえる。
野菜を分けてくれる農家があるのでだいたい鍋が多いという。
外食は一切しないし、おんぼろ長屋なのでなんやかや月5万円あれば足りると答えた。
 じゃあ、かなりの額を貯金しているなあと言った。
ロクちゃんは笑って恥ずかしそうにした。

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ロクちゃん ★2

 ロクちゃんから、ある日アパートを紹介してほしいと頼まれた。
いくらぐらいのアパートがいいの?と聞くと
お金はいいから、とにかくペットの飼えるきれいなアパートがいいとのことだった。
「だけど、ロクちゃん。ペットの飼えるアパートなんかあまりないし、第一きれいなアパートだと だいたい7万以上はするよ。」と答えた。
すると、下を向いて、「親戚の子だから仕方がないよ。」と言った。
ロクちゃんの頼みなので、懇意にしている大家さんに頼んで敷金を2か月上乗せして借りることした。
事務所にロクちゃんを呼び、契約をした。
住民票 印鑑証明書 所得証明書 
ロクちゃんが沖縄の出身だと初めて知った。
そして、収入が予想以上にあったことに驚いた。
というより確定申告をしていることに驚いた。
入居者は親戚の子と言う人は30半ばのきれいな人だった。
名前は理恵だった。
ロクちゃんの親戚でないことはすぐにわかった。
 色が白く、目鼻立ちがはっきりとした女だった。しかし少し、疲れているような感じがした。
まあ、それはそれで、仕事だから私は黙っていた。
理恵はロクちゃんに妙になれなれしかった。
そして、ロクちゃんもまんざらでなかった。
敷金、礼金、前家賃等で60万円ぐらいかかった。
ロクちゃんはお金を1枚1枚数えて私に渡してくれた。
そして、別の封筒を私が契約書のコピーを取っている間に隠すようにして理恵に渡したのである。
その中にはたぶん100万円をくだらないお金が入っているように思えた。
 私は、ロクちゃんにアパートの鍵をゆっくり説明しながら渡した。
再び会えるときまでの短いさよなら。
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ロクちゃん ★3

ロクちゃんの様子がおかしくなってきた。
私に、ブランドの時計はどこで買えるのか?
流行っている料理屋はどこか?とか聞くようになってきた。
それは生活が地味なロクちゃんの口から出る話ではなかった。
私もだいぶ女には痛い目に逢ってきた口だからロクちゃんに言った。
「いいか、ロクちゃん。こんなことを言うのはなんだけど、女は恐いぞ。平気でうそをいうし、
だます。そして、男を騙すことに何も罪悪感を持たないからたちが悪い。
極端な話、男から金を巻き上げるのが仕事だからな。そして、男に貢ぐんだよ。
信じられないかもしれないが、それが現実なんだよ。」
ロクちゃんはあまりいい顔をしなかった。
私に理恵を連れてドライブに行きたいから車を貸してほしいと言われたとき、
 「別に貸すのは構わないが、本当の自分の姿を見せたほうがいいよ。
ロクちゃんの普段の生活を見せて、それに合わなければやめたほうがいいよ。」と言った。
そして私が「いくらぐらい理恵に使ったの?」と聞いた。
すると、ロクちゃんは横を向いたまま何も口をきかなくなってしまった。
 そして、それ以来、まったく連絡が無くなってしまった。
人の女のことでもめるのも嫌だし、本人が気付かないことだから仕方がない。
こちらから連絡する必要もないので、黙っていた。
私は酒匂川の湧水が出る場所に何回も足を運んだがロクちゃんに会うことはなかった。

 
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ロクちゃん ★4

ロクちゃんから連絡が入った。
理恵にお金を貸してあり、振り込むはずが振り込まれてなかったので、心配になって
アパートに行ったら、ドアが開いていた。中を見るとゴミが散乱していて
家財道具は一切なかった。とのことだった。
急いでアパートに行ったらごみが散乱していて、畳がめちゃくちゃになっていた。
そして、壁に穴が2か所開いていた。
私は大家さんに事情を説明しに出向いた。
 大家さんは静かに、「わかりました。」とだけ答えた。
「あとは私が全部 お金を含めてやりますから大丈夫です。」と言い、帰ろうとしたら、
「社長、もうかっていますか?」と言われたので、「いやあ、ぜんぜんですよ。」と答えた。
すると、おもむろに外に出て、たばこを吸い、「社長 実はね、」と話し始めた。
 家賃を3カ月払っていないこと。
入居してからすぐに、刺青の入った男が出入りするようになったということ。
夜中に大きな声で騒ぐので2回ほど警察に呼ばれたこと、
ゴミの出し方で近所の人と口論になったこと。
「いやあ、お世話になっている社長の紹介だから黙っていたけど、出てくれてよかったよ。」と言った。
 私はいくら、借地権のことでお世話したことがあったが、それとこれとは話が違うので、すぐに言ってくれればいいのにと思った。
私はロクちゃんにそのことを話した。
私のことをどう思うとロクちゃんの勝手だし、信じなくてもかまわない。
だが、事実は事実として伝えた。
ロクちゃんは信じられない様子だった。
彼女は暴力をふるう旦那から逃げるためにここに来たということ。
 ロクちゃんに一緒になろうと言ってくれたこと。
まだ、籍を抜いていないので、もし一緒にいるところを見られたらまずいのでアパートには絶対に来ないでほしいと言われたこと。
手術をしなければいけないのでまとまったお金が必要だと言われたこと。
男と女の間で普通に考えればおかしいことを約束していた。
だが、1度も女性と付き合ったことがない、否、手も握ったことがない、
夢を見ている人には無理な話だった。
私はロクちゃんに正直言ってほしい。
いくら貸したんだ。と言った。
すると、しんじられない金額を言った。
それは、普通の男が飲まず食わず働いて5年かかる金額だった。

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ロクちゃん ★5

業者を呼び、リフォームをした。
壁の穴はおそらく男が暴れたときにできたものだろう。
大家には必ず入居者を探します。と言った。
いや、それぐらいの大見得を切らなければ、私の不動産屋としてのメンツがあった。

「馬鹿だね。馬鹿だね。」私はつぶやいた。
優しく、面倒みてあげたのに、、、
なにも見返りを求めなかったのに、
せめて出て行く時に、一言いってくれれば、無駄な家賃を支払わなくてよかったのに、
さびしいなあ、、、、そんな風にまた生きて行くんだろうなあ、、、
悲しいなあ、、、こんなことをしたら、どこにも居場所がなくなるじゃないか。
そんなことは関係ないのだろう。
男なんかいくらでもいるし、普通の生活をしている男には何も感じなくて、刺青のはいった怪しげな男にしか魅力をかんじないし、
それはそれでしかたないよね。
あの子もあの子で、色々とひどい目に逢っているみたいだし。
でも、それにしたって本当に困っていた時に、優しくしてくれたロクちゃんにそんなことをしなくたっていいじゃないか。
ロクちゃん。元気かい?
お金を使うのが嫌いなロクちゃん。
俺は馬鹿だから、一人で気楽が一番だと笑うロクちゃん。
スーパーの半額の総菜を食べているロクちゃん。
たまるとそれを奪いに来る女
その繰り返しかなあ。
ロクちゃん。
ロクちゃん
元気かい?
黙ってお金を差し出すロクちゃん。
それを当り前のように受け取る 女
女の金でパチンコに行く男。
女を殴り、蹴飛ばし、見栄を張って生きていく男。
そんなことをしていったい何になるんだい?
普通に生きればいいじゃないか?
普通に静かにいきればいいじゃないか?
 ロクちゃん。
あっという間に暑い夏が過ぎ、もう、秋だ。
 みんなそんなもんかもしれないなあ。
少し人より美人だからといって、そんなことをしてもいいのかよ。
違う生き方考えないのかよ。
弱いロクちゃんにそんなことをしなくてもいいのに。
 今日も働いて、汗を流して生きる。
ロクちゃん。元気でね。
初めてロクちゃんに会った酒匂川の湧水が出る場所。
ロクちゃんがいつも隅に腰かけていた場所に私は話しかけた。

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